STORY

1891年の夏。南フランス・アルル。

無気力な日々を過ごしていた青年アルマン・ルーラン(ダグラス・ブース)は、郵便配達人の父、ジョゼフ・ルーラン(クリス・オダウド)から1通の手紙を託される。それは、父の親しい友人で、1年ほど前に自殺したオランダ人画家、フィンセント・ファン・ゴッホ(ロベルト・グラチーク)が弟・テオに宛てて書いたまま出し忘れていたもの。パリに住んでいるはずのテオを探し出して、手紙を届けてやってほしいという。

 アルルでは、自分の耳を切り落として精神病院へ送られた外国人の画家は評判がいいとは言えなかった。彼を知る警官によれば、ゴッホが病んでしまったのは、彼が画家たちの宿にしたいと願った“黄色い家”に友人のゴーギャンが来たことが原因だという。疎まれていた友人に対する父の思いにほだされるように、願いを聞き入れたアルマンはパリへと旅立つ。テオの消息をつかめないまま画材商のタンギー爺さん(ジョン・セッションズ)を訪ねると、そこで聞かされたのは意外な事実だった。兄フィンセントの死にうちひしがれたテオは、半年後その理由を自問しながら、後を追うように亡くなったというのだ。

 タンギー爺さんはアルマンに、フィンセントのことを語って聞かせる。テオによれば、フィンセントは幼いころから不幸な子どもだった。自分が生まれる前に死産でこの世を去った同じ名前の兄がいて、本来愛されるべきは兄だと、自分は疎まれていると感じていたという。画商、牧師の道を志すも挫折。28歳にしていまだ無職の彼は、テオの献身的な援助を受けて絵筆をとる。パリに出て芸術家仲間と交わるが、彼らから学ぶと南仏へと向かった。たった8年で素人から仲間に一目置かれる画家にまで成長したフィンセントが、こんなに早く死んでしまうとは。

 父の友人に対して自分が偏見を持っていたと気付いたアルマンは、その死に疑問を抱く。フィンセントが最期の日々を過ごしたオーヴェール=シュル=オワーズでの主治医、ポール・ガシェは「完治していた」と言っていたのに、なぜ自分を撃ったのか?

アルマンはオーヴェールへと向かう。ガシェ医師の家を訪ねるが、彼は数日の間、留守だという。「あの人は邪悪な人だった」と言う家政婦ルイーズ(ヘレン・マックロリー)の証言を不審に思いながら、ガシェを待つことにしたアルマンは、ラヴー宿に逗留する。そこはフィンセントが最期の10週間を過ごした場所だった。

 宿の娘、アドリーヌ・ラヴー(エレノア・トムリンソン)も、フィンセントについて「几帳面で静かな人だった」と語り始める。1年前、銃弾を腹に受けたフィンセントは這うように帰ってきた。ほどなく往診に来たガシェは、なぜか銃弾を摘出しなかった。翌日の午後、知らせを受けたテオが駆けつけ、日付の変わった深夜1時ごろにフィンセントは息を引き取ったという。

 ガシェ医師を待つ間にアルマンは真相を求め、静かな村オーヴェールにさざ波をたてる。フィンセントが好きでよく行っていたオワーズ川でボートを貸している男(エイダン・ターナー)は、フィンセントがガシェ医師の娘、マルグリット(シアーシャ・ローナン)とボートに乗っていたと語る。ガシェ医師の家でピアノを弾いていた娘だ。アドリーヌによれば、マルグリットはいまもフィンセントの墓に毎日、花を供えているという。しかし、マルグリットは「人違いよ」と否定する。ガシェ医師とフィンセントが口論していたという証言。フィンセントに嫌がらせをしていた兄弟の存在。風変わりな赤毛の少年。不自然な傷跡を語るマゼリ医師の話。いったいなぜ、精神的には安定していたはずのフィンセントが自殺したのか? 死にたいならなぜ、頭ではなく腹を撃ったのか?

 父の友情のために、画家の追悼のために、そしてなにより自分自身のために、答えを見つけ出したいアルマンの前に、ついに気まぐれなガシェ医師(ジェローム・フリン)が姿を見せる。彼は何を語るのか。ゴッホが最期に見たものとは、果たして……?

アルマンの旅は、情熱と驚愕に満ちたフィンセントの人生と思いがけない形で交わっていくのだった。

人物相関図